金ナノ粒子による乳がん治療
農業生物工学のジョセフ・イルダヤラージ教授とパデュー大学の研究チームが、体内のガン細胞の存在を検出し、その量まで測定できる方法を考え出した。この方法では、合成DNAの尾を持つ非常に小さな金粒子(人間の髪の毛の幅より1000サイズ以上小さい)を使用する。
この金粒子はBRCA1メッセンジャーRNAスプライスバリアントに結合する。これらは、がん細胞の有無や乳がんのステージを示す遺伝物質の断片である。BRCA1は腫瘍を抑制する遺伝子である。しかし、特定の条件下では細胞を癌化させる可能性がある。この遺伝子が通常より少ない量で発現している場合、乳がんの可能性を示す。
イルダヤラージは、当時大学院生だった研究助手のキュワン・リーとチームを組み、まず金ナノ粒子を設計した。そして、BRCA1のmRNAスプライスバリアントに対応するDNA鎖にタグを付けた。これらのナノ粒子は、細胞に注入されるとmRNAスプライスバリアントの両端に付着する。
細胞内に存在するmRNA(メッセンジャーRNA)スプライスバリアントの実際の数を測定するために、金ナノ粒子にライトを当てる。金ナノ粒子は、その活性度によって光り方が異なる。金ナノ粒子単体(モノマーとして知られる)は光を当てると緑色になるが、一対の金ナノ粒子がmRNAスプライスバリアント(ダイマーとして知られる)に結合すると赤く見える。
この2つの異なる粒子は、光の散乱が異なるのだ。これらのパターンを研究することで、研究者たちは2つの違いを見分けることができた。分光法とは、光が物体と出会ったときにどのように散乱するかを測定するもので、使用された方法のひとつである。もうひとつの方法は、粒子の色の違いを示す比色画像である。全プロセスにかかる時間は約30分である。
現在、がんの診断に使われている方法は、数百から数千の細胞からなるサンプルを使用する。これでは、がんに関与する遺伝子が細胞内の最も低いレベルでどのように作られているかについての十分な情報は得られない。スプライスバリアントは、発現している特定のタンパク質に関する具体的な詳細を与える。
しかし、イルダヤラージは、このプロセスをより高速に行えるように調整し、組織生検での使用を可能にしようとしている。この方法によって、医師は各患者の病期やレベルに応じた治療を行うことができるようになる。